< 「これだけ知っていればなんとかなる」計画化の理論とツール ③:バリューチェーンとビジネスモデル>

 バリューチェーンとは企業内および企業間の機能分業の連鎖が経済価値を生み出す構造のことです。一連の活動が生み出す経済価値に対して、バリューチェーンの各機能要素に掛けているコストを算出し、課題のある機能の効率化や内外作(内部に取り込むか外部に委託するか)の検討を進めます。環境分析ツールであるVRIO※1を使った価値評価も有効です。

 

 従来は同じ産業に属する企業は似たようなバリューチェーンを持っていた(つまり、同質的な競争が多かった)ために、バリューチェーン分析は競合他社に対する差別化戦略の枠内で考えられることが多かったのですが、近年は、競争が同質的なものから業界の壁を超えたボーダレス・コンペティション(異種格闘技)に変容してきたのに伴い、バリューチェーンのデザインだけでなく、バリューチェーンのどこからどのように収益を稼ぐか(収益モデル)を合わせてビジネスモデルとして検討することが多くなってきているようです。収益モデルにおける「収益の稼ぎ方」は、①薄利多売か高利少売か②サブスクリプション(固定額の会費を徴収して使い放題)③広告料収入(サービス利用者でなく広告主から利益を得る)など、様々なやり方が考えられます。

 

 

 かつては企業の成長と競争力強化の方策として垂直統合が主流で、「日本のお家芸」ともいえる自動車や家電はその典型でしたが、IT業界は水平分業をベースに急成長を遂げましたし、インターネットはビジネスモデルの多様化を促しています。自動車業界も今後、ガソリンから電気への転換の中で業界各社のビジネスモデルは大きく変わることが予想されます。BCG(ボストン・コンサルティング)はこうしたビジネスモデルの変化をディコンストラクション(元々は哲学用語で脱構築の意)と名付けて4つの型を示し、鋭い分析をしています。

バリューチェーンとディコンストラクション

※1 <「これだけ知っていればなんとかなる」計画化の理論とツール ①:環境分析> を参照ください。