< 「これだけ知っていればなんとかなる」組織化の理論とツール> ①:主要な組織論

■組織とは?

 

 そもそも組織とは何なのか?「近代組織論の父」と言われるC.I.バーナード(18861961年 電話会社社長であり経営学者)の定義が有名なので紹介します。

 

 ・一定の目的を持つ複数の人々の体系的関係の集団を「協業体系」と呼ぶ

 ・協業体系を形成するのは人間の特性である

 ・組織は協業体系の1つであり、共通の目的、協働の意志(貢献意欲)、コミュニケーションの3要素が組織成立の条件である

 ・組織の存続条件として、組織が成員に与える利益(=誘因)が、成員の組織に対する貢献と同等、もしくはそれを上回ること 

 

 私は組織について考える時はバーナードの組織成立条件を組織の3C”Common goalCollaboration or ContributionCommunication)という風に暗記して、都度都度使使っています(結構よく使います)。

 

■公式組織と非公式組織

 

 公式組織とは組織図に描かれている組織のことで、そこには明確な業務と指揮命令のヒエラルキーがあります。他方、非公式組織とは、個人的なつながりで自然発生する集団で、例えば、趣味が同じ人の集まり、飲み仲間、タバコ部屋、師弟関係、同期会、プロジェクトや研修の同窓会などです。こういった「つながり」が社員の意志や感情に作用して、組織のパフォーマンスに影響を与えると言われています。雑談、本音トーク、飲みニュケーションなど、フラストレーションやストレスの発散だけでなく、ふとした気づきを得て、それが思わぬ成果につながることもあるでしょう。

 

 コロナ禍の中で業務のリモート化対応は進んでいますが非公式組織が衰えることで、組織の活力や創造力を奪われる懸念があると感じます。

 

■ 「組織は戦略に従う」「戦略は組織に従う」

 

 「組織は戦略に従う」はアルフレッド・チャンドラーの言葉で、戦略に沿って組織は作られる(べき)という主張です。「無闇に組織図をイジるな」ということとも通じています。これに対して、イゴール・アンゾフは「戦略は組織に従う」という逆の命題を提起し、組織学習と組織能力の向上があってこそ環境の変化に対応した最適な経営戦略がとれるということを言っています。

 2つの命題はどちらが正しいという類のものではなく、両方とも正しいのです。

■ 官僚制組織

 

 近年では「官僚的」というのはあまりいい意味で使われることはありませんが、マックス・ウェーバー(18641920年「知の巨人」)は近代的な社会における法の支配の確立と合理性・効率性の追求という観点で、官僚制組織を「理想の組織」として理論化しました。ウェーバーによれば、官僚制組織の特徴は①専門化②非人格化③階層化であり、規則、権限、階層、専門性、公私分離、文書主義が正確性、迅速性、明確性を担保するとされています。

 ウェーバーの生きた資本主義黎明期の社会環境を考えると、当時としては「理想」であったことに異論はありませんし、「さすがはウェーバーさん!」と感心しますが、近年においては数々の弊害(セクショナリズム、目的と手段の転倒、事なかれ主義、形式主義、秘密主義、前例踏襲主義・・・)が指摘されています。

 

■機械的組織と有機的組織

 

 

 「ピラミッドみたいな組織は古い、もっとフラットにしないといけない!」という話をよく聞きます。「組織のコンティンジェンシー理論」はその辺りを理論化したものです。この理論は組織を機械的組織と有機的組織に分け、どちらがよいかは経営環境によって異なると主張しています。下図は2つの組織形態を比較したものです。

組織のコンティンジェンシー理論

■ いい組織と悪い組織(これは権威ある学説ではなく私の創作です)

 

 「組織は悪い」と言いながら、私は「いい組織と悪い組織がある」と常々、社員に説いてきました。

 

  いい組織:一般社員が課長の仕事をする、課長が部長の仕事をする、部長が社長の仕事をする、社長はブラブラしている

  悪い組織:社長が部長の仕事をする、部長が課長の仕事をする、課長が一般社員の仕事をする、一般社員は小間使い 

 

 

「社長が楽したいだけでは?」と言いたげな顔で社員たちは聞いていました(笑)。

組織形態の分類

■ 組織形態の分類と体系

 

 統制(一元化・多元化)と権限(集権・分権)の観点で組織形態を分類すると右図のようになります。

 

 

 また、恒常的な組織(静態的組織)と環境変化に即応する臨時的・フレキシブルな組織(動態的組織)、更には社外との連携(ネットワーク組織)を含めて整理すると企業組織の体系は右図のように整理できます。