⑤ リーダーは負けて帰ってこない
私はリーダーにとって最も大事なことは「負けて帰ってこない」だと思っています。チームが一生懸命に作り上げたものを携えて「勝負する」場面で、リーダーが負けて帰ってきたらチームの努力は水の泡ですし、「勝てない=成果が出せない」チームは存続してゆけません。
ビジネスの「勝負」にはライバルとの対等な関係での競い合いだけでなく、顧客や上位組織といった「強者」と対峙し交渉・説得するという場面が多々あります。リーダーが「前面に立って勝負する」ケースは圧倒的に後者が多いですし、これはリーダーの重要な役割です。ところが、実際にはリーダーの交渉・説得スキルにかなり個人差があるように見えます。
自分が詳細まで全て理解した上でどんな質問がきても答えられるようにと、部下に何十枚ものバックアップ資料を作らせる上司というのも少なからず見てきました(意外と多いようです・・・)が、そういう人はほぼ全て「負けて帰ってくる」タイプです。おそらく、極めて優秀なスタッフだった人がリーダーに昇進して「完璧な理解」「完璧な説明」に心を砕き続けているということなのでしょうが、説明することと交渉・説得に成功することは別物(説明が詳細に入り込みすぎて隘路にハマって、挙句に時間切れなんてことも・・・)ですし、準備が完璧でなくとも「勝負」して「勝って帰る」のがリーダーです。
下記は高等テクニックの部類に入る交渉術(?)の例です。他にも色々あると思いますし、人それぞれに味の出し方も違うでしょうから、あくまでも参考です(交渉の達人であれば「こんなの当然」でしょうが)。
・こちらの提案を相手の要望という形で引き出す
「おっしゃる通りです、こういうことですよね」「先日ご指導いただいたことを形にしてまいりました」
・相手に勝ったと思わせる
「今日は負けました、かなりきびしい条件ですがなんとかこれでやらせていただきます」
・説明にわざと「穴」を作り質問・反論を誘導し、その場で解決してみせる
「申し訳ありません、ご説明が足りなかったようです、ご質問の件はこのようになっております」
自分は交渉が得意でないと思っているリーダーの方には、「ハーバード流交渉術」「ハーバード流NOと言わせない交渉術」「ヤクザに学ぶ交渉術」・・・サラッと読めて、役に立つ、しかも価格もお手頃な本なのでお薦めできます(「ハーバード 交渉」とか「ヤクザ 交渉」とアマゾンで検索するといっぱい出てきますよ)。交渉術に関しては様々なセミナーもあるようですね。「相手にNOと言わせない」とか「100%こちらが悪いのをひっくり返したヤクザの武勇伝」とか、真似できなくても知っているだけで交渉事の力になります。ベストセラー級に売れている本ということは交渉相手は当然知っていると思ったほうがいいでしょうし、全く知らないと不利どころではありません。
自分は勝てるリーダーなのか、部下に膨大なバックアップ資料ばかりつくらせていないか、是非、振り返ってみてください。